"> ">

ニューズレター


2023.Mar vol.100

日本国籍でないことを理由とする入居拒否はできる?


不動産業界:2023.3.vol.100掲載

自己の所有するマンションについて、ある入居希望者との間で、入居に向けた手続きが進んでいました。昨日の時点で、入居希望者から、既に敷金及び1ヶ月分の前家賃は支払われており、あとは契約書を取り交わすだけの状況でした。しかし、契約締結日である本日になって、入居希望者が日本国籍でないことが判明しました。日本国籍でない入居者は、複数人で騒ぐ等の迷惑行為を行う可能性が高いと聞いたことがあります。日本国籍でない人は入居させたくないので、本日、入居を拒否しました。このような対応は、何か法的に問題がありますか。私の所有するマンションですし、誰に貸すかは私の自由ですよね。


契約を締結するか否かについては、原則として、当事者が自由に決定できるとされています(民法521条1項)。もっとも、契約を締結しなかったことが、信義則に反すると認められる場合には、賃貸マンションのオーナーに不法行為責任が認められる可能性がございます。本件では、敷金及び1ヶ月分の前家賃を支払われている状況で、あとは契約書を取り交わすだけの状況であるにも関わらず、入居希望者が日本国籍でないことを理由に賃貸借契約の締結を拒否したとのことですので、賃貸人は、入居希望者に対して、損害賠償責任を負うと判断される可能性があります。

さらに詳しく

1.契約の自由について

民法上、法令に特別の定めがある場合を除き、契約を締結するかどうか、契約の内容をどのようなものにするかについては、契約当事者が自由に決定できるとされています(民法521条1項、2項)。

2.日本国籍でないことを理由とする入居拒否について

上述のとおり、契約をするかどうかについては、原則として当事者の自由とされています。もっとも、居住用の賃貸借契約の締結に際して、国籍により差別することは、許されないと考えられます(憲法14条1項参照)。

裁判例においても、「原告Aが日本国籍ではないことを理由に、被告Bが本件物件を原告会社に賃貸しないこととしたのであるから、被告Bは、原告Aに対し、不法行為に基づき、原告Aの損害を賠償する責任を負うものというべきである。」と判示し、賃貸人の入居希望者に対する不法行為責任を認めたものがあります(京都地判平成19年10月2日)。

また、上記裁判例においては、「賃貸マンションの所有者が、もっぱら入居申込者の国籍を理由に賃貸借契約の締結を拒むことは、およそ許されない」とされています。

そうすると、本件においても、賃貸人は、入居希望者に対して、入居希望者が日本国籍でないことを理由に入居を拒否しているため、このような理由で入居を拒否したこと自体が違法と判断され、賃貸人の入居希望者に対する損害賠償責任が認められる可能性があります。

3.契約締結上の過失について

判例によると、「取引を開始し契約準備段階に入ったものは、一般市民間における関係とは異なり、信義則の支配する緊密な関係にたつのであるから、のちに契約が締結されたか否かを問わず、相互に相手方の人格、財産を害しない信義則上の注意義務を負うものというべきで、これに違反して相手方に損害をおよぼしたときは、契約締結に至らない場合でも契約責任としての損害賠償責任を認めるのが相当である。」としています(最判昭和59年9月18日)(契約締結上の過失の理論)。

本件では、敷金及び1ヶ月分の前家賃を支払われている状況で、あとは契約書を取り交わすだけの状況であるにも関わらず、合理的な理由なく(国籍という不合理な理由のみにより)、契約の締結を一方的に拒んでいることからすれば、契約締結上の過失の理論からしても、信義則上、損害賠償責任が認められる可能性があります。

以上のような理由から外国籍であることを理由とする入居拒否は違法と判断される可能性が高いため、注意する必要がございます。

本ニューズレターは、具体的な案件についての法的助言を行うものではなく、一般的な情報提供を目的とするものです。

本ニューズレター及び弁護士法人ALG&Associatesからのリーガルサービスに関する情報(セミナー情報、法律相談に関する情報等を含みます。)をご希望される方は次のメールアドレスに会社名、氏名、役職、部署、電話番号及び配信希望先メールアドレスを記入したメールをお送りください。なお、当該情報送信は、予告なく変更及び中止される場合があることをご了承ください。

■ 配信希望メールアドレス roumu@avance-lg.com

各種メディア関連の出演・執筆のご依頼はこちらから 03-4577-0705

Mail
CLOSE
Menu
">