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ニューズレター
2023.Apr vol.101
不動産業界:2023.4.vol.101掲載
部屋の入居者を募集したところ、募集サイトから申込みがあり、申込者に契約書を書いてもらいました。
募集サイトに掲載されていた情報には「ロフト付き」とあり、仲介業者も、申込者に対して、当該物件にはロフトが設置されていると伝えていました。
ところが、実際には当該物件にはロフトが設置されていませんでした。申込当時、当該物件には入居者がまだいたため、申込者は内覧をすることができず、そのことに気づかず契約を申し込まれました。契約書には物件の平米数・坪数の記載はありますが(24.22㎡)、間取りやロフトに関する記載はありません。また、募集サイトには、「同一物件における他の部屋の写真をイメージとして使用している場合があります」との記載はしています。
この契約に問題はないでしょうか?
契約の重要な要素に錯誤がある場合、契約当事者は契約の取消しを主張することができます(民法95条1項)。募集条件と異なり、本件物件にロフトが設置されていないことは、本件賃貸借契約の重要な要素の錯誤に該当し、申込者による契約取消しの主張が認められる可能性があります。
また、ロフトが設置されていないことを説明していなかったことについて、賃貸人側が、信義則上の説明義務違反に基づく損害賠償責任を負う可能性があります。
申込者が契約を申し込む意思表示をした際、契約の「重要な要素」に錯誤、すなわち認識と事実の食い違いがあるとき、申込者は当該意思表示を取消すことができる場合があります(民法95条1項)。
本件で問題となっている物件は24.22平方メートルの大きさであるところ、このような大きさの物件におけるロフトの有無は、物件の使用収益態様に大きな差が生じるものと考えられます。
そのため、申込者の認識にもよりますが、ロフトの有無は、本件物件の賃貸借契約において、「重要な要素」であると 判断される可能性があります。したがって、申込者が契約の取消しを主張した場合、その主張が認められる可能性があります。
契約の一方当事者は、信義則上、契約締結に先立ち、契約締結の成否に関する判断に影響を及ぼす情報を相手方に提供する説明義務を負います。当該説明義務に違反した場合には、不法行為責任を負う場合があります(最高裁平成 23 年4 月 22 日判決参照)。
本件においては、仲介業者の説明等により、本件物件がロフト付きであるかのような誤った情報が申込者に提供されており、また、申込者は内覧ができなかったために、ロフト付きであるとの誤解を解消する機会もなかったと考えられます。そのため、賃貸人側としては、募集条件と実際の間取りが異なることについて申込者に説明し、申込者の誤解を解消する説明義務を負っていたと判断される可能性があります。したがって、本件物件にロフトがないこと等の説明をしなかったことが、その説明義務に違反すると判断される可能性は否定できません。
本件では、契約書にロフト付きとは記載されておらず、募集サイトには「同一物件における他の部屋の写真をイメージとして使用している場合があります」などと記載しているとしても、申込者の誤解を解消するに足りる説明には当たらないと判断される可能性があります。
上記説明義務違反によって損害賠償責任を負う場合、賠償しなければならない損害の範囲は、原則として、当該義務違反により通常生じる損害となります(民法416条1項)。
本件では、本件物件が募集条件のとおりでなかったことにより、申込者が賃貸借の目的を達することができなくなった場合には、申込者が他の物件に引っ越すための費用などが賠償すべき範囲に含まれる可能性があります。
以上のように、ロフトのような重要な設備については、募集条件と実際の条件が一致しているか十分に確認する必要があるといえるでしょう。