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ニューズレター
2024.Dec vol.121
不動産業界:2024.12.vol.121掲載
「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律」(以下「LPガス法」といいます。)が改正され、本年7月2日から改正LPガス法の一部が施行されたとのことですが、不動産オーナーや不動産管理会社等の不動産関係者にどのような影響があるのでしょうか。
LPガス法の改正により、これまでのLPガス業界の商慣行が改められることになり、不動産関係者においても、LPガス事業者に対して、過大な利益供与を要求等しないようにする必要があると考えられ、LPガス法改正を踏まえた対応が求められることになります。以下、詳しくみていきましょう。
LPガス業界において、ガス販売契約の確保を目的とする商慣行がこれまで長く続いており、LPガスの消費者(入居者)が不利益を被っている場合があることが指摘されてきました。
例えば、LPガス事業者が、不動産オーナーや不動産管理会社等の不動産関係者の要求に応じて、ガス設備だけでなく、エアコン、インターホン、WiFi機器などといった、ガス設備とは関係のない設備についてまで無償で提供し、その費用をLPガス料金に上乗せして回収を行うという「無償貸与」の事例が見受けられ、ガス料金の内訳が不透明となっていたほか、賃貸物件の入居者などが最終的に負担を引き受けており、消費者に不利益を与えているとの指摘がありました。
また、LPガス事業者が、ガス配管設備の所有権を留保したまま、ガスの供給を行い、消費者がLPガス事業者を切り替えようとする場合には、高額の違約金等を請求して、LPガス事業者の切替えを制限するという、いわゆる「貸付配管」の事例も多くあり、消費者がLPガス事業者を自由に選択できない状況も問題視されていました。
そこで、今回の改正により、「正常な商慣習を超えた利益供与の禁止」(改正LPガス法規則第16条第15の3及び4号)や、「消費者の事業者選択を阻害するおそれのあるLPガス事業者の切替えを制限するような条件付き契約締結等の禁止」(改正LPガス法規則第16条第15の5及び6号)等が定められました。
「正常な商慣習を超えた利益供与」には、上記のような無償貸与の場合が含まれるほか、物件設備の安値での提供、ガス設備のフリーメンテナンスサービス、紹介料の支払い、値上がりを前提とした安価なLPガス料金の提示など、名目を問わず、LPガス販売契約の確保を目的として行われる過大な利益供与全般を指すものと考えられています(経済産業省改正ガイドライン参照)。
なお、経済産業省が出している改正ガイドラインでは、賃貸物件を対象とするLPガス販売に関し、「賃貸集合住宅等のオーナー等に対する利益供与行為が、事業者間の健全な競争を阻害し、消費者に不利益をもたらす可能性を鑑みれば、そうした利益行為については、過大なものかどうかにかかわらず、一切行わない方向で取り組んでいくことが望ましい。」と説明されており、「過大」であるかを問わず、一切の利益供与を行わないことが推奨されていることからすると、賃貸物件を対象とするLPガス販売に関しては、「正常な商慣習を超えた利益供与の禁止」に該当するかどうかを厳しく判断されるおそれがあるため、注意が必要と考えられます。
また、「消費者の事業者選択を阻害するおそれのあるLPガス事業者の切替えを制限するような条件付き契約締結」には、①契約の解除を一切もしくは長期間許容しない期間や条件を設けること、②契約の解除に関して、月々のLPガス料金に照らして高額な違約金規定や貸与設備等の買取条項や返金条項を設けること、③消費者からの申出が無い限り契約期間終了時に契約を自動更新するという契約において、更新を拒否できる期間を極めて短い期間とすること等が該当すると考えられています。
加えて、経済産業省の改正ガイドラインにおいて、「いわゆる「貸付配管」は、消費者によるLPガス事業者の選択を阻害しうるものであることから、今後の新規契約においては、建物所有者と配管所有者を一致させ、貸付配管を行わない方向で取り組んでいくことが望ましい。」と説明されており、今後、ガス配管設備の所有権を留保すること自体、望ましくないことが明確にされました。
以上のように、LPガス法改正により、ガス販売契約の確保を目的とする過大な利益供与や条件付き契約等が禁止され、LPガス事業者が規制されることになりましたが、従前のLPガス業界の商慣行が、不動産関係者の要求に応じて行われていた事情があることを踏まえると、今後、不動産関係者においても、LPガス事業者に対して、改正LPガス法が禁止している過大な利益供与を要求しないように留意する等の対応が必要になると考えられます。LPガス法改正に関し、お困りの際は、是非弁護士にご相談ください。