ニューズレター
2016.Mar Vol.16
不動産業界:2016.3.vol.16掲載
先生こんにちは。
実は私の亡くなった親が何十年も前に貸していた土地があるんだけど、貸している相手からその土地の上に立っている建物が古くなったから建替えたいなんていう話が来ているのよ。
前々からそろそろ返してほしいなあなんて思っていて、たしかに古くなっているし、もうすぐ返してもらえるものだと思っていたところなんだけど…
建て替えてほしくないから応じたくないんだけど、拒否したらどうなるの?
借地上の建物の建替えについては、原則として、建物の増改築にあたるものとして当事者間で話し合いがつかない場合には借地非訟の対象として裁判所で手続きが行われることになります(借地借家法17条2項、借地法8条の2第2項)。
借地非訟とは、本来は当事者間の話し合いで行われるべき事項について、裁判所が介入する形で代わりに許可を与えたりする手続きです。
借地非訟が申し立てられた場合には、現実として、建替えが認められることが大半です。
但し、裁判所が建替えを認めるに際しては併せて承諾料が認められることが多く、賃料の増額等が認められる可能性もあります。
そのため、建替えが認められる前提で、金銭的によい条件を得る方向で交渉することをおすすめいたします。
借地の権利に関しては、借地借家法(旧借地法を含む。)上、多くの権利が認められています。例えば、借地期間は定めがなければ一定の長期間になりますし、期間の終了時には合意により更新されずとも法律上の更新規定が適用されることから、借地権者は何もなければ半永久的に借地を使用できるというように言われることもあります。
今回のような建物の建替えの場合についても、借地に関する契約において、増改築(建替え等の新築をする場合を含むとされています。)を制限する旨の借地条件が存在する場合であって、当事者間で協議が整わない場合には、借地権者が裁判所に許可を申立てることができる旨の規定が存在します(借地借家法17条2項、借地法8条の2第2項)。
すなわち、法律の形式からすれば、本来であれば自由に増改築ができることが原則であるところ、当事者間の合意により借地条件として増改築が制限される場合があり、当該制限がある場合には、借地権者は、借地権設定者である地主に対し、許可を求めなければならないことになります。そして、許可を得ないまま増改築した場合には、借地権設定者である地主は、特段の事情がある場合を除いて、契約を解除することができるとされています(最判昭和41年4月21日)。
そのため、借地権者は、借地権設定者である地主から許可が得られない場合には、許可をせよという実体的な請求権もない以上、本来であればどうしようもないという状況になります。そのような場合に、裁判所が関与して、一種行政的な裁量で借地利用の適正化を実現しようとして設けられたのが前述の規定であり、当該規定に基づく手続きを借地非訟と言います。
すなわち、借地権者としては、最終的には裁判所において借地非訟を行うことで、建替えの目的を果たそうとするのですが、この借地非訟という手続きにおいては、許可をされない例が極めて少ない状況が続いています。許可がされなかったものとしては、当初の契約目的とは全く異なる建物への建替えを求めた事例や、近い時期に建物が朽廃に至ると判断された事例、契約残存期間が1年を切っており契約更新が認められない可能性が十分にあったといった事例がありますが、これらの事例からしても、よほどの事情がない限りは建替えが認められることがわかります。
以上からすれば、借地権設定者である地主の立場からすれば、原則として最終的には建替えが認められることになるという認識を持たなければなりません。
借地非訟において付随的裁判(借地借家法17条3項、借地法8条の2第3項)と呼ばれる手続きが存在し、具体的には財産上の給付の決定、すなわち承諾料の価格を決めたり、あるいは賃料の増額を認めたりすることがあります。
そして、借地非訟における承諾料の相場は土地の価格の3から5パーセント程度です。そのため、地主側が建替えを求められた場合には、借地非訟になった
場合も見据えて、相場よりもできる限り承諾料を多く、また賃料を増額する交渉を行っていくべきものと考えられます。