ニューズレター
2020.Oct vol.71
不動産業界:2020.10.vol.71掲載
弊社は、賃貸借契約を締結する際、賃借人に対し、本人確認のできる身分証明書等を提示してもらっています。
令和2年10月1日から、保険証を身分証明書として本人確認を行う場合に制限がかかると聞きました。そこで、弊社はこれまでの取扱いを変更する必要があるのでしょうか?
本人確認等のために被保険者証の提示を求める際には、以下の点に留意する必要があります。
・被保険者証の提示を受ける場合には、当該被保険者証の被保険者等記号・番号等を書き写すことのないようにすること。また、当該被保険者証の写しをとる際には、当該写しの被保険者記号・番号等を復元できない程度にマスキングを施すこと。
・被保険者証の写しの送付を受けることにより本人確認等を行う場合には、あらかじめ申請者や顧客等に対し被保険者等記号・番号等にマスキングを施すよう求め、マスキングを施された写しの送付を受けること。また、被保険者等記号・番号等にマスキングが施されていない写しを受けた場合には、当該写しの提供を受けた者においてマスキングを施すこと。
・被保険者等記号・番号等の告知を求めているかのような説明を行わないこと。たとえば、ホームページ等において、「被保険者証の記号・番号が記載された面の写しを送付してください」といった記載を行わないよう留意すること。
医療保険の被保険者証については、従来から、様々な取引、届出等の場面において、本人確認等を目的として用いられていますが、これを見直す必要があります。
この度、「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律」により、被保険者記号・番号が個人単位化されたことに伴い、プライバシー保護の観点から、健康保険事業とこれに関連する事務以外に、被保険者記号・番号の告知を要求することを制限する「告知要求制限」が設けられました。賃貸借契約や保証委託契約に関連する条文としては、次のとおりです。
「何人も、…その者が業として行う行為に関し、その者に対し売買、賃借、雇用その他の契約(以下この項において「契約」という。)の申込みをしようとする者若しくは申込みをする者又はその者と契約の締結をした者に対し、当該者又は当該者以外の者に係る被保険者等記号・番号等を告知することを求めてはならない。」(医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律(令和元年法律第九号)による改正後の健康保険法第194条の2第3項柱書)。
この告知要求制限の規定は令和2年10月1日から施行されており、原則として、本人確認等を目的として被保険者記号・番号等の告知を求めることが禁止されます。そして、上記規定と同趣旨の制限は、健康保険被保険者証のみならず、船員保険被保険者証、私立学校教職員共済加入者証、国民健康保険被保険者証、後期高齢者医療保険被保険者証及び国家公務員共済組合法・地方公務員等共済組合法に基づく共済組合組合員証についても同様に適用されます。
なお、上記法律は、第194条の2第4項において、「何人も、…業として、被保険者等記号・番号等の記録されたデータベース(その者以外の者に係る被保険者等記号・番号等を含む情報の集合物であって、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいう。)であって、当該データベースに記録された情報が他に提供されることが予定されているものを構成してはならない。」と規定しています。
これにより、現在顧客データ等に被保険者等記号・番号等を記載している場合であって、かつこれが他に提供されることが予定されている場合には、被保険者等記号・番号等を削除する必要があると考えられます。