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ニューズレター


2023.Jan vol.98

賃借人側からの賃貸借契約の解約について


不動産業界:2023.1.vol.98掲載

私は、アパートのオーナーをしており、いわゆるサブリース業者(以下「本件業者」といいます。)との間で私が所有しているアパートの建物全体に関し一括賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」といいます。)を締結し、本件業者が、各入居者との間で賃貸借契約を締結するという形態で事業を行っています。先日、本件業者から、本件賃貸借契約を終了させるため、解約を申し入れるという手紙が届きました。このような解約申入れは有効なのでしょうか。


まず、本件賃貸借契約が期間の定めのない賃貸借契約であった場合、本件業者からの本件賃貸借契約の解約申入れは、原則として有効であり、解約申入れの日から3ヶ月が経過することで本件賃貸借契約は終了することになります(民法第617条第1項柱書及び同項第2号)。

次に、本件賃貸借契約が期間の定めのある賃貸借契約であった場合、解約をする権利を留保する旨の特約があれば、当該特約に従って解約申入れは有効になり、そのような特約がなければ、解約申入れは無効となると考えられます(民法第618条)。

さらに詳しく

1.期間の定めのない賃貸借契約について

民法第617条第1項柱書及び同項第2号は、「当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。」として、建物の賃貸借については、解約の申入れの日から3ヶ月を経過した時点で賃貸借契約が終了する旨規定しています。

この点、民法第617条第1項柱書及び同項第2号は、借地借家法第27条及び第28条により大きく修正がされています。この修正は、賃貸人から賃借人に対し、解約申入れをした場合について、賃貸借契約が終了するまでの期間を3ヶ月ではなく、6ヶ月とし、かつ、解約が有効であるためには、「正当事由」が必要であるとするものです。

しかしながら、借地借家法第27条及び第28条による修正は、一般的に弱い立場に置かれている賃借人の保護を趣旨とするもので、賃貸人から賃借人に対する解約の申入れについてのみ適用されるものであり、賃借人(サブリース事業者)から賃貸人に対する解約の申入れについては、民法第617条第1項柱書及び同項第2号がそのまま適用されます。

なお、いわゆるサブリース契約について、一般的には契約期間の定めがあることが多いのですが、サブリース契約の締結時に、サブリース業者とオーナーとの間で意見が一致しない部分があり、契約書が締結されていない場合等に契約期間の定めがないこともあるようです。

2.期間の定めのあるサブリース契約について

民法第618条は、「当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する。」と規定しています。

また、同条についても借地借家法第27条及び第28条による修正がされていますが、期間の定めのない賃貸借契約の場合と同様、当該修正は、賃貸人から賃借人に対する解約の申入れについてのみ適用されており、賃借人(サブリース事業者)から賃貸人への解約の場面には適用がありません。

したがって、期間の定めのあるサブリース契約については、サブリース業者からの解約が有効かどうかを判断するために、サブリース契約の約款に、期間内解約権留保に関する条項が含まれているか否かを確認する必要があります。

3.結語

賃貸借契約において、賃貸人から賃借人に対する賃貸借契約の解約は、借地借家法第27条及び第28条により、非常に厳格に判断される傾向のある「正当事由」が必要であり、簡単にはできません。

他方で、賃借人(サブリース事業者)から賃貸人に対する賃貸借契約の解約は、サブリース契約の場合であっても、比較的容易にすることができるという傾向があります。

したがって、オーナーとサブリース業者との間で借上賃料等のトラブルが生じないよう、サブリース契約を締結する際には、当事者間でよく条件等を協議する必要があります。心配な点がある場合には、サブリース契約を締結する前に、弁護士等の専門家に相談することが重要でしょう。

本ニューズレターは、具体的な案件についての法的助言を行うものではなく、一般的な情報提供を目的とするものです。

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