ニューズレター
2016.Sep 特別号
特別号:2016.9掲載
この間、民泊をしている会社が書類送検されたとのニュースがあったわ。最近、うちのアパートでも、大きな荷物を持った外国人さんを見かけるのだけれども、あれも民泊なのかしら・・・?そもそも、民泊って何かよくわからなくて、もしかしたら、私も捕まっちゃうかもしれないの?
確かに、無許可の民泊は違法になることがありますが、大家さんが刑事罰の対象とはならないので安心して下さい。順番に説明していきますね。
民泊に、明確な定義はありませんが、一般的に「不特定の者が一般の民家に宿泊料を支払って泊まること」を指すと言われています。
2020年の東京オリンピックに向けて、東京には大勢の外国人が訪れることが見込まれますが、これに対し、宿泊施設が絶対的に足りないことが問題となっており、足りない宿泊施設を補うためにも、民泊が注目されています。
日本においては、旅館業法という法律が定められています。この中で、「旅館業を経営しようとする者は、都道府県知事(東京都の場合、区長)の許可を得なければならない。」との条項があり、許可なく旅館業を行った者に対しては「6月以下の懲役又は3万円以下の罰金」を科しています。
したがって、民泊も「旅館業」に該当する場合は、許可を得ずに行うと刑事罰が科されることになります。
では、「旅館業」とは何でしょうか。
「旅館業」には、「ホテル営業」「旅館営業」「簡易宿所営業」「下宿営業」の4つがありますが、このうち民泊に該当し得るのは「簡易宿所営業」になります。
「簡易宿所営業」とは、「宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業」と定義されており、民泊は基本的にこれに当てはまります。
ただし、「営業」というためには、「反復継続する意思を持って行うこと」が必要になります。
例えば、1年に2、3度、日本に遊びに来る外国の友人を宿泊させ、お小遣い程度のお礼をもらうのであれば、「営業」にはあたらず、旅館業法の許可はいりません。しかし、Airbnbなどのマッチングサイトに登録し、世界中の不特定多数の人から宿泊料をもらって、何日も宿泊させる行為は、「反復継続する意思を持っている」といえますので、これを無許可で行うことは違法になります。
なお、このとき違法となるのは、「宿泊料を受けて宿泊させた者」であり、無断で建物を民泊に利用された大家さんは違法とはなりませんので、ご安心ください。
以上述べてきたとおり、民泊を営業として行うには、都道府県知事(東京都の場合、区長)の「許可」が必要になります。
しかしながら、民泊の需要増加もあり、この「許可」の基準は近年緩やかになってきています。その分かり易い例が「フロント」です。
これまで、民泊のような「簡易宿所営業」においては、フロントの設置がされていることが許可基準と定められていることが多かったです。
そして、当然、普通のアパートにフロントはありませんので、これまでは、アパートの一室で民泊をすることの許可は得られず、民泊は事実上禁止されていました。
こうしたところ、今年の3月、厚生労働省が全国の都道府県や区に対し、「これまでは、『簡易宿所営業』においては、フロントの設置を許可基準とするように指導してきたけど、これからは、一定の要件を満たせばフロントを設置しなくてもいいよ。」という通知を行いました。これにより、さっそく「フロントの設置」を許可基準からはずすよう条例を改正した自治体もあります。
このように、民泊をめぐる情報は様々なものがあり、また、近年いろいろと変化しています。不動産を所有している大家さんは、こまめに正確に情報をチェックしておくべきですね。
入居者が無断で民泊を行い、見知らぬ外国人が大勢アパートに出入りすれば、他の入居者に対して不安を与える可能性があります。また、アパートで無許可の違法民泊が行われているような場合は、トラブルの原因となります。
そこで、所有するアパートにて無断民泊が行われている場合は、これを阻止する必要があります。
無断民泊に対応するためには、まず、民泊が行われている場所を特定し、「誰が民泊を行っているのか」を明らかにする必要があります。
このためには、周辺住民に対して聴取する方法や、宿泊客と思しき人物に対して「どこの部屋に宿泊するのか」を聴取する方法等が考えられます。また、Airbnb等のマッチングサイトにて写真が掲載されている場合は、当該写真に写った部屋の間取りや窓の景色等から部屋を特定するといった方法も考えられます。
部屋を特定した後は、部屋の入居者に対し、民泊を止めるよう通知書を送付する方法が考えられます。無断で部屋を民泊に使用することは、賃貸借契約の目的違反や、無断転貸に該当することになりますので、これに基づいて契約を解除できる可能性もあります。
また、Airbnb等の民泊マッチングサイトも、旅館業法における刑事罰の対象になり得ますので、当該サイト運営会社に対して掲載をやめるよう通知することも考えられます。