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ニューズレター
2024.Jun vol.115
不動産業界:2024.6.vol.115掲載
近年、所有者が誰だかわからない不動産(所有者不明不動産)や、管理が不十分なために危険な状態になっている不動産(管理不全不動産)が増加していることを受けて、そのような所有者不明不動産や管理不全不動産を適切に管理するための制度が創設されたと聞いたのですが、どのような制度なのでしょうか?
令和3年の法改正により、既存の制度では対応が難しかった、所有者不明不動産や管理不全不動産に特化した財産管理制度が創設され、利害関係人が裁判所に申し立てて、管理人を選任してもらうことができるようになり、より効率的に解決が望めるようになりました。
近時、不動産登記を見ても、現在の所有者が誰なのか判明しない不動産や、適切に管理する人がいないために管理不全状態に陥り、近隣住民や通行人等の第三者にとって危険な状態になっている不動産が増加しており、このような所有者不明不動産や管理不全不動産が社会的な課題として認知されるようになりました。
このような経緯から、令和3年に法改正が行われ、令和5年4月から改正法が施行されました。この改正により、所有者不明不動産については、調査を尽くしても所有者やその所在を知ることができないなど、一定の利用条件を満たす場合には、利害関係人が地方裁判所に申し立てることによって、所有者が不明な土地又は建物の管理を行う管理人を選任してもらうことができるようになりました。
また、管理不全不動産についても、所有者による管理が不適当であることによって、他人の権利又は法的利益が侵害され又はそのおそれがあるなど、一定の利用条件を満たす場合には、同様に、利害関係人が地方裁判所に申し立てることによって、その土地又は建物の管理を行う管理人を選任してもらうことができるようになりました。
管理不全不動産に該当する例としては、建物にひび割れや破損が生じており、倒壊するおそれがあるような場合や、ゴミが不法投棄され、臭気や害虫が発生しているような場合が想定されています。
改正前においても、所有者不明不動産については、相続財産管理人制度や不在者財産管理人制度等の既存の財産管理制度を利用できる場合はありましたが、管理不全不動産については、利用できる制度が見当たらない状況でした。
また、所有者不明不動産についても、不動産の所有者を全く特定できない場合には、相続財産管理人制度等の既存制度の利用条件を満たさないことがあり、既存制度を利用できる場合であっても、たとえば、相続財産管理人制度は、不動産に限らず、相続財産全般の管理のための制度であるため、被相続人の不動産以外の財産についても調査を行わなければならず、手続きが長期化し、予納金も高額化する傾向があるなど、既存の制度では効率的に対応できないことがありました。
今回の改正で、所有者不明不動産と管理不全不動産に特化した財産管理制度が創設されたことにより、このような制度の隙間を埋めることができ、不動産の効率的かつ適切な管理を実現できるようになりました。
身近に、所有者不明不動産や管理不全不動産がある場合には、法改正により創設された新制度を利用して、効率よく解決できる場合がありますので、弁護士に相談してみるのがよいでしょう。