ニューズレター
2016.Sep Vol.22
不動産業界:2016.9.vol.22掲載
私は今マンションの一室を学生さんに貸していて、何ヶ月か前に、この賃貸借契約の契約期間は満了したのですが、その学生さんはずっと住み続けています。私も特に出て行ってもらうつもりはないので、このまま貸し続けるつもりです。ところで、この学生さんとの間で賃貸借契約の更新合意はしていないのですが、更新料は請求できるのでしょうか?
現在学生さんとの間の賃貸借契約は、法定更新によって期間の定めのない賃貸借契約として存続している状態です。
この法定更新の場合に更新料を請求するためには、原則として、賃貸借契約書の中で、“法定更新の場合でも更新料を請求することができる” 趣旨の合意が存在する必要があります。
建物の賃貸借について期間の定めがある場合に、当事者が期間の満了の1年前から6ヶ月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同様の条件で更新したものとされます(借地借家法28条本文)。ただし、期間の定めのない賃貸借契約となります(同条但し書き)。このように賃貸借契約が、当事者の合意がないにもかかわらず“勝手に”更新されることを、「法」律の「定」めによって更新されるものであることから「法定更新」と呼びます。
賃貸借契約における更新料の支払義務を定めた法律は存在しません。したがって、更新料の請求権は、契約自由の原則に基づき、賃貸借契約において当事者が更新料の支払いを合意することによって初めて発生します。居住目的の賃貸借契約について、消費者契約法10条によって更新料の支払いの合意が無効とされないかという問題がありますが、判例(最判平成23年7月15日判時2135・38)は、「賃貸借契約に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は、更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り」無効とならないと判断しています。このことから、更新料の支払合意の内容は、更新料の額などが一義的かつ具体的に記載されているかどうか、不当に高額となっていないかどうかに注意しなければなりません。
期間満了時に更新料を支払う旨を合意した場合、つまり更新料支払特約がある場合に、賃貸借契約が合意更新されたときには、更新料の支払義務があることに疑いはないでしょう。それでは、「法定更新」の場合には、どうなるのでしょうか。
先述のとおり、更新料の支払義務を定めた法律はなく、更新料の支払義務は合意によって発生するのですから、結局のところ、この問題も当事者の合意の内容がどうであったか、つまり、当事者は「法定更新」の場合でも更新料を支払うとの意思を有していたかどうか、という当事者の意思解釈の問題となります。したがって、更新料に関する条項を作成する際には、「法定更新」の際にも更新料の支払義務が発生するということを明確に記載しておく必要があります。仮に、明確な記載がなければ、通常は「法定更新」の場合にまで更新料を支払うとの合意を読み込むことは難しいのではないでしょうか。
なお、先述の判例は、「法定更新であるか合意更新であるかにかかわらず、X年経過する毎に、借主は、貸主に対して更新料として賃料のYヶ月分を支払わなければならない」との更新料条項で、法定更新の更新料支払義務を認めています。