ニューズレター


2016.Nov Vol.24

大家さんが敷金を返してくれない!


不動産業界:2016.11.vol.24掲載

先日、借りて住んでいた建物の鍵を返した上で退去したのだけど、大家さんが敷金を返してくれなくて困っています。大家さんが言うには、なんでも私が借りていた時に新しく設置した家庭用エアコン1台がまだ外されていないから、建物はまだ明渡されておらず、敷金を返す必要はないと言うんです。それどころか、退去した後も賃料が発生していると言って賃料の請求もされています。エアコンを取り外さない限りは明渡したことにならず、敷金は返してもらえない上に、賃料も払い続けなければいけないのでしょうか。


建物の明渡しは、一般に、当該建物の占有者が立ち退くとともに、建物内にあった動産を取り除いて賃貸人に直接的な支配を移すことを意味します。したがって、家庭用エアコン一台が残っていても、建物の鍵を返して退去されている以上は、建物の明渡しは完了しており、敷金の返還を請求する権利は発生しています。もちろん、退去後は賃料を支払う義務はありません。エアコンが残っていること自体は明渡しが完了していない理由とはなりません。

さらに詳しく

賃借人は、建物の賃貸借契約が終了した場合、住んでいた物件を賃貸人に返還する(明渡す)義務を負います(民法616条、597条1項)。他方で、賃借人は、賃貸借契約終了時に賃貸目的物を原状に復する義務(原状回復義務)を負うとするのが判例・通説です。賃借人が負う、物件の明渡し義務と原状回復義務はあくまで異なる義務であって、原状回復義務が履行されていなければ明渡し義務が履行されていないという関係にはないのです。

そのため、本件においても、賃借人は、自身が設置したエアコンについては原状回復義務の一環として収去しなければならない可能性はあるものの、明渡し義務については、建物の鍵を返還した上で、退去をしていることから、履行されていると考えられます。したがって、賃貸人はエアコンが撤去されていないことを理由として敷金を返さないことは許されず、かつ、賃借人は明渡し後の賃料を支払う必要はないと考えられます。


以上の通り、賃借人の建物明渡し義務と原状回復義務は異なり、仮にエアコン等の付属物を収去していなくても建物の明渡し義務の履行は完了していると言えます。明渡し義務と原状回復義務は異なるものであることに注意しましょう。

本ニューズレターは、具体的な案件についての法的助言を行うものではなく、一般的な情報提供を目的とするものです。

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