ニューズレター


2017.Feb Vol.27

賃貸借契約期間内に契約を終了させる旨の条項(途中解約条項)の有効性


不動産業界:2017.2.vol.27掲載

建物を人に貸していて、まだそこに人が住んでいるんですが、建物がもうかなり老朽化してしまっているので、建て替えたいと思っているんです。貸した人は、そこでお店もやるというので、契約期間を長く設定していて、期間満了まであと5年あります。退去してもらうのも5年先になるのかなと思い、困っていましたが、契約書をよく見ると、契約期間中であっても、貸主が契約を終了する旨の通知をしてから6か月すれば契約を終了させることができるとの条項がありました。これで契約を終了させることができますよね?


契約期間中における解約申入条項の有効性の問題となりますね。有効であるという立場にたって交渉や訴訟を進めるより他はありませんが、単純に契約書に記載があるから契約書の記載通りの効力が認められるという訳にはいかず、無効とされるリスクは否定できないので留意が必要です。

さらに詳しく

賃貸借契約期間中における解約申入条項が定められている場合に、当該条項を使って契約を終了させられないか、つまり、賃貸契約期間中における解約申入条項の有効性について、これを無効とする裁判例(東京地判昭和55年2月12日判時965号85頁)があります。

当該裁判例は、「期間の定めのある建物の賃貸借契約において、期間内における解約権留保の特約が借家法6条により無効とされるか否かについて議論の存するところであるけれども、解約権留保それ自体は有効であるとしても、本件のように申入後直ちにこれを明け渡す旨の特約は同法3条に反し同法6条によって無効であるといわなければならない。」と述べています。

当該裁判例は、厳密に言うと、少なくとも申入後直ちに明け渡す旨の特約は無効であると述べているだけで、申入れから数か月経過してから賃貸借契約が終了する旨の条項については、判断はしていません。

それでは、申入後数か月(たとえば、本件のQのように6か月)してから賃貸借契約が終了する旨の条項の有効性はどのように考えればよいのでしょうか。

借地借家法によれば、期間の定めのある賃貸借契約において、賃貸人が更新拒絶をしようとしても、次の要件を充足しなければ更新拒絶はできず、法定更新となります(同法26条)。

  • ①所定の期間内に更新拒絶の通知をすること
  • ②契約期間が満了すること
  • ③正当事由が存在すること
  • ④遅滞なく異議の申立てをすること(賃借人が使用を継続する場合)

そして、借地借家法は、賃借人を保護する借地借家法の規定に違反し、賃借人に不利な契約条項を賃貸借契約書に定めても、その条項は無効であるとしています(同法30条)。

仮に、賃貸人からの途中解約を認める条項が有効であるとすると、賃貸人は、借地借家法に求められている所定の期間内の更新拒絶をせずとも、中途解約をすればよいということになり、更新拒絶に関する借地借家法の規定は、骨抜きになります。

そうすると、賃貸人からの中途解約を認める条項は、賃借人を保護する借地借家法の規定に違反し、賃借人に不利な契約条項となりますので、無効と判断されるリスクが高いと考えられます。

とはいえ、契約期間満了がかなり先である一方で、賃貸借契約の終了を急がなければならないようなケースであれば、無効のリスクを踏まえた上で、当該条項が有効であることを前提に交渉や裁判手続き等を進める必要があるでしょう。

本ニューズレターは、具体的な案件についての法的助言を行うものではなく、一般的な情報提供を目的とするものです。

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