ニューズレター


2014.Oct Vol.2

デング熱で老人ホームが封鎖されることはあるの?


臨時号:2014.10.vol.2掲載

最近、天狗熱?とかいうのが流行っているみたいで、うちの老人ホームの入居者さんを連れてよく遊びに行く近所の公園が封鎖されちゃったみたい。入居者さんと怖いわねえって話してたんだけど、どうも最近うちの入居者さんの一人が熱っぽかったりして、体調がよくないみたいなんです……。もし入居者さんが感染していたら、公園だけじゃなく、うちの老人ホームみたいな建物も封鎖されちゃうんですか?


老人ホーム等の建物内で特定の感染症が発生した場合であって、消毒等により対処できない場合には、都道府県知事は、老人ホーム等の建物を封鎖することができます。

さらに詳しく:

ハリウッド映画では、軍などが、感染症が蔓延した都市や建物を封鎖するシーンがありますが、果たしてこのようなことが日本でも起こり得るのでしょうか。

実は、日本においても、感染症の予防及び感染患者に対する医療に関する法律(感染症予防法)が制定されており、この法律に基づいて、都道府県知事は、一定の病原体に汚染された建物を封鎖したり、感染症の蔓延を防止するために交通を規制し、時には遮断して一定の地域を封鎖することができます(法32条、33条等)。

そして、この法律では、感染症について、その病原体の毒性の強さや感染率の高さなどから危険性が高い順に一類から五類までに分類するなどして、その対応方法について定めています。

もっとも、今回問題になっているデング熱は、感染症予防法に基づいて建物を封鎖できる「一類感染症」ではなく、四類感染症に分類される感染症であって(法6条5項11号、施行令1条15号)、また蚊を媒介とする感染症であるため消毒(駆除)による対処が可能であることから、入居者さんがデング熱に感染しても建物が封鎖されることはありません。

ちなみに「一類感染症」の例としては、世界的に話題になっているエボラ出血熱等が挙げられます。

なお、公園の封鎖についてですが、厳密に言えば、「一類感染症」でない限り、一定地域を封鎖することはできません(法33条)。今回の公園の封鎖については、東京都立公園条例が「都立公園については、管理の必要があると都知事が認めた場合には使用を制限できる」と定めており、この条例によって封鎖されているようです(東京都立公園条例17条)。

以上から、出入り等が制限されるような形で封鎖されることは、相当重い感染症でない限り、都道府県知事の権限によっても、認められません。
いずれにせよ、感染症は感染が広がる前に早期に対処することが重要ですので、早々に医師に診断を仰いでくださいね。

参考条文:

感染症予防法
32条1項 都道府県知事は、一類感染症の病原体に汚染され、又は汚染された疑いがある建物について、当該感染症のまん延を防止するため必要があると認める場合であって、消毒により難いときは、厚生労働省令で定めるところにより、期間を定めて、当該建物への立入りを制限し、又は禁止することができる。
33条 都道府県知事は、一類感染症のまん延を防止するため緊急の必要があると認める場合であって、消毒により難いときは、政令で定める基準に従い、七十二時間以内の期間を定めて、当該感染症の患者がいる場所その他当該感染症の病原体に汚染され、又は汚染された疑いがある場所の交通を制限し、又は遮断することができる。
東京都立公園条例
17条 知事は、都市公園の管理のため必要があると認めるときは、都市公園の使用を制限することができる。

本ニューズレターは、具体的な案件についての法的助言を行うものではなく、一般的な情報提供を目的とするものです。

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