ニューズレター


2015.Jun Vol.7

自然災害なら賠償しなくていいの?


不動産業界:2015.6.vol.7掲載

今年は5月上旬にして台風が6つも発生していて、台風の当たり年みたいですね!
先日上陸した台風6号で、私が賃貸する建物で浸水被害が出たり、私が所有する物置が倒壊してお隣さんに被害が出ちゃったんだけど、自然災害で発生した被害なんだから、私が責任を負う必要はないですよね?


浸水や倒壊を引き起こした暴風雨の規模によっては、賃貸人や物置の所有者に賠償責任が発生する可能性があります。

さらに詳しく

1.浸水被害について

賃貸人は、賃貸借契約に基づき、賃借人に目的物を使用収益させる義務を負い、当該義務の反射として目的物を使用収益に適する状態に置くべき義務を負います。そのため、賃貸物件において、建物の管理上の不備などの賃貸人の過失により何らかの損害が発生した場合には賃貸人は損害賠償義務を負うのが原則です。

もっとも、自然災害の場合は、建物の管理を尽くしていたとしても損害が発生し得る場合があり、賃貸人が管理義務を尽くしたとしても回避できない損害(不可抗力の場合)や、賃貸人に帰責性のない理由による損害(例えば、賃借人の帰責性ある行為が起因した場合等)については、例外的に賃貸人に損害を賠償する義務が発生しないと考えられています。

この点、今回、台風6号の暴風雨によって浸水したということですが、我が国では一部の地域を除き、夏頃になれば台風による暴風雨の脅威にさらされることが一般的であるため、台風によってある程度の規模の暴風雨が発生したとしても浸水が生じない建物を提供する義務が賃貸人にあると考えられます。そのため、今回の浸水の原因が、当該建物が所在する地域において想定を超える程の未曾有の暴風雨に基づくということであれば、不可抗力に基づくものとして賃貸人に損害賠償責任が発生しないと判断される可能性がありますが、その程度に至らない暴風雨しか発生せず、かつ、賃貸人以外の者には帰責性なく侵水が生じた場合、浸水によって賃借人に生じた損害を賠償する責任が発生することになると考えられます。

この場合、浸水によって賃借人が支出せざるを得なくなった費用(雨水によって汚損された室内の動産類のクリーニング費用や破損した動産類の時価相当額の合計額)が、賠償すべき金額になると考えられます。

2.物置倒壊に基づく被害について

一方、物置については、雨水浸入の場合とは異なる法律上の根拠から責任が生じることが考えられます。
物置等の土地上の工作物については、その設置又は保存に「瑕疵」がある、すなわち通常備えているべき安全性が欠けている場合には、当該物置の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負うとされています。もっとも、占有者が損害の発生を防止するために必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない、とされています。

すなわち、天災が原因であったとしても、土地上の工作物が「通常備えているべき安全性が欠けている」場合、すなわち、通常予期できず、物置の倒壊を防止することが客観的に期待できないほどの異常な自然力(不可抗力)によるものではない限り、最終的には物置の所有者が、発生した損害について賠償する責任を負うことになると考えられます。

本件では、台風6号により、所有する物置が倒壊したということですが、上述の通り、台風による暴風雨が発生することが通常であるわが国においては、台風6号がもたらした暴風雨が、物置が所在する地域で通常想定し得ないほどの強度のものであったという事情がない限り、暴風雨によって倒壊しない程度の強度を有していなければ「通常備えているべき安全性が欠けている」と評価される可能性があります。

この場合、所有者としては、物置の倒壊によって隣地に生じた被害について賠償をすべきと考えられます。

本ニューズレターは、具体的な案件についての法的助言を行うものではなく、一般的な情報提供を目的とするものです。

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