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ニューズレター
2022.Sep vol.94
不動産業界:2022.9.vol.94掲載
私は、所有する居住用物件を一括賃貸(サブリース)する一方で、その一室に居住しています。ところで、最近、新たに自転車を購入したので、共有スペースに駐輪している入居者Aの自転車を他の場所に移動させて、そこに自己の自転車を駐輪したいと思っています。私の所有地なのだから当然可能ですよね。ちなみに、入居者Aが共有スペースに駐輪することについては、サブリース業者が賃貸借契約書で認めているようです。
オーナーは居住用物件をサブリース業者に賃貸しているとのことですので、オーナーは、サブリース業者に対して、賃貸借契約の目的物である不動産を契約により定まった目的に従って使用・収益させる義務を負います(民法601条)。そのため、オーナーは、サブリース業者(又は入居者)が契約の内容により定まった用法を遵守する義務(用法遵守義務)に違反しているという場合でない限り、サブリース業者及び入居者の使用方法について文句は言えません。たとえ所有者であっても、入居者Aの自転車を無断で他の場所に移動させることは難しいと考えられます。
賃貸人は、賃借人が賃貸借契約の目的物である不動産について契約の内容により定まった用法を遵守する義務(用法遵守義務)に違反した場合には、賃借人に対して、その是正(用法遵守義務の履行)を請求できると考えられます。そのため、マスターリース契約(所有者とサブリース業者間の契約)における賃貸人であるオーナーも、賃借人であるサブリース業者が用法遵守義務に違反した場合には、サブリース業者に対して、その是正を求めることができると考えられます。
他方で、賃貸借契約においては、賃貸人は、賃借人に対して、賃貸借契約の目的物である不動産を契約により定まった目的に従って使用・収益させる義務を負い(民法601条)、また、マスターリース契約においては、オーナーとサブリース業者との間で、サブリース業者が自らの判断で賃貸条件を決定し、サブリース業者が選定した第三者に転貸することができるとの合意がなされていることが通常であると思われます。
そうすると、実務上は、サブリース業者と入居者との間で締結される賃貸借契約において賃貸条件をどのようなものにするかについては、サブリース業者が権限を有している場合が多く、このような場合には、オーナーは、サブリース業者が居住用物件を事業用物件として賃貸した場合等オーナーとの基本的な合意内容に反する賃貸条件を賃借人との間で締結したような例外的な場合でない限り、サブリース業者に対して、サブリース業者と入居者との間の賃貸借契約における賃貸条件の変更等(用法遵守義務の履行)を要求することはできません。
転貸借契約における賃借人(入居者)は、マスターリース契約における賃貸人(オーナー)に対して、善良な管理者の注意をもって賃貸目的物を保管する義務(保管義務)等の法定の義務を負っていると解されています。そのため、オーナーは、入居者に保管義務違反がある場合には、入居者に対して、保管義務の履行(保管義務違反の是正)を求めることができると考えられますが、他方で、入居者が転貸借契約に定められた条件を遵守しており、入居者に保管義務違反がない場合には、そのような請求はできないものと考えられます。
サブリース契約がなされた場合には、対象物件についての所有者の利用権原は大きく制限されることになりますので、オーナーとしては注意が必要です。